調査基準日:2026年08月10日/株価基準:2026年08月10日終値 39,590円(東証プライム、前日比 +2,130円/+5.69%)〔⑰⑱〕
調査手法:5つの検索アングル(①主カタリスト=EUVマスク検査装置の受注回復とHigh-NA対応/②市況・需要環境=半導体製造装置市場とEUV露光機出荷/③供給・投資動向=TSMC・ASML・メモリ各社の設備投資と会社ガイダンス/④競合動向=KLA・ASML・東京エレクトロン・Applied Materials・ホロン/⑤政策・地政学・懐疑論=輸出管理・顧客集中・2024年空売りレポートと在庫論点)によるディープリサーチ。一次開示を全文取得のうえ数値を逐語照合(2026年6月期決算短信31頁、同第3四半期・第2四半期・第1四半期決算短信、会社概要PDF、東京エレクトロン2027年3月期第1四半期決算短信、KLA/ASML/Applied Materialsのプレスリリース、SEMIプレスリリース)。取得ソース38本(うち法定開示PDF原文5本)から41の主張を抽出し24件を複数系統の独立照合で相互検証、31件確認。補完調査2観点を実施。
引用記事:40本(すべてURL・発行元・日付付き)
target bug trends 反証検証:2026年08月10日(12論点。支持7・要修正4・棄却1) 全セクション再監査:2026年08月10日(4系統)
免責事項:本レポートは公開情報の整理を目的とした情報提供であり、投資勧誘・投資助言ではありません。価格・シェア等の予測値はすべて出典元の見解です。本レポートに記載された数値・見通しは、記載時点の公開情報に基づくものであり、将来の株価・業績を保証するものではありません。レーザーテックの2026年6月期決算は本レポート作成の4日前にあたる2026年08月06日に発表され、翌08月07日の株価は前日比 −13.55% となりました〔①⑱〕。
- このレポートに「課金する価値」がある3つの理由
- エグゼクティブサマリー
- 第1部:株価上昇に必要な材料(検証済み)
- 材料1:受注高が2.4倍。半導体関連装置は前期比+208.5%(最重要の個別カタリスト) 信頼度 高
- 材料2:2027年6月期は売上・利益とも過去最高計画。受注は3,000〜4,000億円レンジ 信頼度 高
- 材料3:装置市場そのものが2026年に+23.2%の過去最高、2028年に2,295億ドル 信頼度 高
- 材料4:EUV露光機の出荷が48台→60台超へ。High-NAの本格投入がマスク検査の世代交代を呼ぶ 信頼度 中〜高
- 材料5:サービス売上が+36.5%・構成比25.4%。装置サイクルの谷を埋めた 信頼度 高
- 材料6:TSMCが2026年設備投資を600〜640億ドルへ引き上げ、ASMLは通期見通しを上方修正 信頼度 高
- 材料7:無借金・自己資本比率73.3%・研究開発費+39.5%。谷でも投資を止めていない 信頼度 高
- 第2部:警戒すべきリスク
- 第3部:独占の持続性と会計への疑義(補完調査)
- 第4部:需要先の設備投資と競合の同時点比較(補完調査)
- 監視ポイント(チェックリスト)
- 引用記事一覧
- 会社情報
- 決算速報
- 競合比較(5社)
- target bug trends
- 調査上の留意点・未解決事項
このレポートに「課金する価値」がある3つの理由
💎 POINT 1|受注が2.4倍になった決算で、株価は1日で13.55%下がった。その矛盾を数字で分解する
2026年6月期の受注高は2,375億4百万円、前期比 +125.7%。半導体関連装置単独では +208.5% です〔①〕。それでも決算翌営業日の2026年08月07日、株価は5,870円安の −13.55% で引けました〔⑱〕。本レポートは、この同居がどこで起きたのか——会社計画1,250億円と市場コンセンサス1,380億円程度の差、受注レンジ3,000〜4,000億円と市場期待4,000億円程度の差——を出典付きで特定します〔③〕。
💎 POINT 2|棚卸資産が年商の72.8%。東京エレクトロンの2.8倍という「見る場所」を渡す
期末の棚卸資産は1,677億91百万円で、年間売上高2,304億85百万円の 72.8% に達します〔①〕。同じ2026年06月30日時点の東京エレクトロンは7,515億51百万円で、直近四半期の年率換算売上に対し 25.7% です〔㉙〕。この差が「検収基準・受注残1.11年分・前受金443億円」という構造から来るのか、それ以外なのか。読後、決算短信で最初に開く頁が変わります。
💎 POINT 3|「EUVマスク検査シェア100%」を撤回した。反証検証で落ちた主張も、落ちたまま載せている
初稿では通説どおり「世界シェア100%の独占」と書きました。反証検証で一次資料の裏付けが取れず、第三者推計では市場全体でKLAと合算65〜70%という数字が出たため、この主張は撤回して書き直しています〔㉕〕。target bug trends では12論点を検証し、支持7・要修正4・棄却1の内訳をすべて開示します。
※見出しは挑発的ですが、本文の数値・主張はすべて出典付きで検証済みです。本レポートは情報提供であり、投資勧誘・投資助言ではありません。
エグゼクティブサマリー
- 受注の底打ちは「数字で」確認された — 2026年6月期の受注高2,375億4百万円(前期比+125.7%)、うち半導体関連装置1,722億16百万円(+208.5%)。受注残高は3,229億64百万円で、2027年6月期の売上ガイダンス2,900億円に対し 1.11年分 に相当します〔①〕。
- 業績の谷は当期で終わり、来期は過去最高計画 — 2027年6月期会社計画は売上高2,900億円(+25.8%)・営業利益1,250億円(+18.8%)・純利益900億円(+16.2%)。受注高は 3,000〜4,000億円 のレンジを提示しています〔①③⑳〕。
- 装置市場そのものが過去最高圏 — SEMIは2026年の半導体製造装置市場を前年比+23.2%の1,659億ドル、2028年に2,295億ドルと予測。ASMLは2026年のEUV出荷を60台超(2025年は48台)に置き、2026年売上見通しを430〜450億ユーロへ上方修正しました〔⑤⑥⑦⑧〕。
- ただし市場が売ったのは「計画の水準」である — 営業利益1,250億円に対し発表前コンセンサスは1,380億円程度、受注レンジ上限4,000億円に対し市場期待も4,000億円程度に上がっていたとされ、決算翌営業日の株価は−13.55%で引けました〔③⑱〕。アナリストの2027年6月期純利益コンセンサスは1,003億67百万円で、会社計画900億円を 11.5%上回ったまま据え置かれています(2026年08月10日時点)〔⑲〕。
政策面では、米中間の輸出管理の強化が特定地域向け販売を制約しうる構造リスクが残ります。加えて本社所在国以外への売上依存度が 87.8%、上位顧客3社への依存が 約79%(2025年6月期有価証券報告書)という集中構造は、高収益の源泉と表裏一体です〔①㊲〕。会計面では2024年06月の空売りレポートが在庫評価を論点化しており、当期の棚卸資産評価損が2,119百万円から 5,019百万円 へ2.4倍になった点は、賛否どちらの側からも見る価値のある数字です〔①㉑㉒〕。
第1部:株価上昇に必要な材料(検証済み)
材料1:受注高が2.4倍。半導体関連装置は前期比+208.5%(最重要の個別カタリスト) 信頼度 高
2026年6月期の受注高は 2,375億4百万円(前期1,052億26百万円、+125.7%)。品目別では半導体関連装置が 1,722億16百万円(+208.5%)、サービスが617億91百万円(+35.8%)、その他の製品が34億97百万円(−10.8%)でした〔①〕。会社は「当社グループの受注高は2,375億4百万円と前期の1,052億円26百万円から回復しました」と明記し、同時に「前期の受注高の影響から連結売上高は2,304億85百万円(前年同期比8.3%減少)となりました」と、当期の減収が前期の受注不振の写像であることを説明しています〔①〕。
期末受注残高は 3,229億64百万円(前期末比+2.2%)、うち半導体関連装置3,013億3百万円(+1.4%)、サービス173億49百万円(+22.1%)です〔①〕。受注残高を2027年6月期の売上ガイダンス2,900億円で割ると 1.11年分 となり、来期売上の可視性は相対的に高い状態にあります(自計算:322,964÷290,000=1.11)。
📝 留意:受注高には「受注取消・変更等による調整額」が含まれます〔①〕。前期の半導体関連装置の受注高が異常に低かった(+208.5%という増加率の分母)背景には、取消・変更によるマイナス調整が効いている可能性があり、増加率そのものを実需の倍率と読み替えることはできません。
材料2:2027年6月期は売上・利益とも過去最高計画。受注は3,000〜4,000億円レンジ 信頼度 高
会社は2027年6月期(2026年07月01日〜2027年06月30日)の連結業績予想として、売上高 2,900億円(前期比+25.8%)、営業利益 1,250億円(+18.8%)、経常利益1,250億円(+15.9%)、親会社株主に帰属する当期純利益 900億円(+16.2%)、1株当たり当期純利益1,004円12銭を公表しました。年間配当予想は前期比22円増配の 351円(中間140円+期末211円)です〔①〕。売上高・営業利益・純利益はいずれも過去最高となる水準です(2025年6月期実績:売上2,514億77百万円・営業1,228億43百万円・純利益846億52百万円)〔①〕。
受注高については 3,000〜4,000億円 のレンジ予想が示され、過去最高も視野に入るとされています〔③⑳〕。会社は2026年6月期についても受注高レンジ予想を1,700〜2,200億円から2,000〜2,400億円へ引き上げた経緯があり、実績2,375億円はその上限寄りに着地しました〔⑳〕。
📝 留意:受注高レンジと品目別内訳(半導体関連装置2,250億円計画等)は決算説明会資料に基づく数値で、本レポートは分析ブログ⑳とフィスコ配信③を経由して把握しています。決算短信本体〔①〕には受注高予想の記載はありません。一次資料での確認は未達です。
材料3:装置市場そのものが2026年に+23.2%の過去最高、2028年に2,295億ドル 信頼度 高
SEMIの2026年央市場予測によれば、2026年の半導体製造装置の世界売上高は前年比 +23.2% の 1,659億ドル で過去最高、2028年には 2,295億ドル に達する見通しです〔⑤⑥㊵〕。2026年第1四半期の装置販売額は365億ドルで四半期として過去最高、前年同期比+14%でした〔㊵〕。成長の牽引役はHBM向けDRAMを中心とする先端メモリ投資と、AI/HPC向け先端ロジック投資です〔⑤⑥〕。
Applied Materialsは2026年5月14日の決算で、暦年2026年の半導体装置市場成長率の想定を 前年比+30%超 へ引き上げています〔㉚㉛〕。
材料4:EUV露光機の出荷が48台→60台超へ。High-NAの本格投入がマスク検査の世代交代を呼ぶ 信頼度 中〜高
ASMLは2026年のEUV出荷を 60台超(2025年は48台)とし、うちHigh-NA EUVを10台程度出荷する計画とされています。High-NA1台あたりの価格は約3.8億ドルで、Intelは14Aノード向けに、SK hynixはメモリ向けに導入するとされています〔⑧〕。ASMLはすでに量産向けHigh-NA機 EXE:5200 の初号機を出荷しており、前世代EXE:5000比で生産性が60%向上し175枚/時に達するとしています〔㉖〕。2026年第2四半期決算では、2027年に向けてLow-NA EUVの生産能力を2026年比 30%増(約65台規模) へ拡張する方針を示しました〔⑦〕。
レーザーテックはこの世代交代に対して製品を先置きしています。High-NA EUV向けのアクティニックEUVパターンマスク欠陥検査装置 ACTIS A300シリーズ は2023年11月24日に発表済みで、新規設計光学系と高輝度光源「URASHIMA」によりA150比で欠陥検出性能を大幅に改善したとしています〔⑫⑩〕。2025年10月31日には量産ファブ向けの高スループット機 ACTIS A200HiTシリーズ を発表しました〔⑪〕。
✅ 株価への含意(プラス材料):EUV露光機の設置台数増加は、マスク検査装置の設置母数とサービス収益の母数を同時に増やします。ただしEUV出荷台数とマスク検査装置受注の間に定量的な相関を示す一次資料は本調査では取得できていません。
材料5:サービス売上が+36.5%・構成比25.4%。装置サイクルの谷を埋めた 信頼度 高
2026年6月期のサービス売上は 586億46百万円(前期比+36.5%) で、売上構成比は 25.4%(58,646÷230,485の自計算)に達しました〔①〕。同期間に半導体関連装置売上は1,680億90百万円(−17.2%)、その他の製品は37億47百万円(−32.5%)と落ち込んでおり、サービスが単独で全社の下支えに回った構図です〔①〕。収益認識の内訳でも「一定期間にわたり移転されるサービス」が367億5百万円から 474億32百万円 へ増加しています〔①〕。
サービス受注高は617億91百万円(+35.8%)、サービス受注残高は173億49百万円(+22.1%)で、フローもストックも積み上がっています〔①〕。2027年6月期のサービス計画は615億円(+4.9%)で、当期ほどの高成長は想定されていません〔⑳〕。
📝 留意:サービス売上の四半期別内訳は決算短信に記載がなく、第4四半期のサービス売上が約165億83百万円で四半期として過去最高だったとする数値は分析ブログ⑳経由の説明会資料ベースです。一次資料での確認は未達です。
材料6:TSMCが2026年設備投資を600〜640億ドルへ引き上げ、ASMLは通期見通しを上方修正 信頼度 高
TSMCは2026年07月16日の決算説明会で、2026年の設備投資計画を当初の520〜560億ドルから 600〜640億ドル へ引き上げ、過去最高としました。設備投資の70〜80%を先端プロセスの研究開発と能力構築に充て、通期売上成長率の見通しも「前年比40%超」へ引き上げています〔⑨〕。ASMLは2026年第2四半期決算で通期売上見通しを前回の360〜400億ユーロから 430〜450億ユーロ へ、粗利率を51〜53%から54〜56%へ引き上げました〔⑦〕。CEOのChristophe Fouquet氏は2026年上期の受注が「極めて強い(extremely strong)」と述べています〔⑦〕。
メモリ側では、SK hynixが今後2年間でLow-NA EUVを20台導入する計画とされ、DRAM向けにHigh-NA EUVの採用も進めています〔㉝⑧〕。レーザーテックの当期の地域別売上では韓国が 660億75百万円(前期比+23.2%) と最大市場になり、日本が281億27百万円(+36.0%)、その他アジアが310億56百万円(+31.5%)と伸びた一方、台湾は458億54百万円(−29.7%)、米国は516億10百万円(−24.0%)、欧州は77億59百万円(−61.8%)と落ちています〔①〕。
📝 留意:メモリ向けの伸びとロジック向けの落ち込みが同時に起きており、地域別売上の増減はそのまま需要の方向とは読めません。台湾・米国・欧州の減少は前期の受注不振と検収時期の影響を含みます〔①〕。
材料7:無借金・自己資本比率73.3%・研究開発費+39.5%。谷でも投資を止めていない 信頼度 高
期末の自己資本比率は 73.3%(前期末63.7%)、純資産は2,468億50百万円、現金及び預金は915億3百万円です〔①〕。負債合計898億円には借入金が含まれておらず、当期の支払利息は計上ゼロ、取引銀行2行との貸出コミットメント 400億円 は借入実行残高ゼロで全額未使用です〔①〕。実質無借金経営が一次資料で確認できます。
研究開発費は 162億92百万円(前期116億77百万円、+39.5%)で全額が一般管理費に含まれています。売上高に対する比率は7.07%(自計算:16,292÷230,485)です〔①〕。減収減益の年に研究開発費を4割積み増したことが、営業利益率を前期48.8%から 45.7% へ押し下げた主因の一つです〔①〕。同時に自己株式を120億3百万円取得し、配当を311億31百万円支払っています〔①〕。
第2部:警戒すべきリスク
⚠️ リスク1:会社計画がコンセンサスに届いていない。2027年6月期の営業利益計画1,250億円に対し、発表前の市場コンセンサスは 1,380億円程度 であったとみられ、下振れる形になりました〔③〕。受注高レンジ3,000〜4,000億円についても「従来想定より引き上げられた印象も、事前の市場期待は4,000億円程度に上昇していたとみられる」と指摘されています〔③〕。日本経済新聞も「27年6月期純利益16%増、市場予想届かず」と報じました〔④〕。株価は2026年08月07日に −13.55%(5,870円安、37,460円)、売買高5,470,200株で引けています〔⑱〕。
⚠️ リスク2:顧客集中。上位3社で約79%。2025年6月期の有価証券報告書における主要な相手先別の販売実績は、Intel・TSMC・Samsung Electronicsの3社で売上の 約79.4% を占めるとされています〔㊲〕。2024年6月期の有価証券報告書では、TSMC 680億円(31.9%)・Intel 592億円(27.7%)・Samsung Electronics 491億円(23.0%)の計82.6%でした〔㊱〕。当期の海外売上比率は 87.8%((230,485−28,127)÷230,485の自計算)です〔①〕。1社の設備投資判断の変更が業績に直撃する構造で、当期の減収はまさにその局面にあたります。
⚠️ リスク3:棚卸資産1,677億91百万円と前受金の逆流。期末の仕掛品は1,224億49百万円、原材料及び貯蔵品は453億42百万円で、棚卸資産合計 1,677億91百万円 は年間売上高の 72.8% に相当します〔①〕。同時に前受金は643億88百万円から 442億84百万円 へ201億4百万円減少し、キャッシュ・フロー計算書上でも前受金の増減額が −211億20百万円 となりました〔①〕。営業キャッシュ・フローは485億40百万円で、純利益774億85百万円に対する比率は 62.6% です(自計算:48,540÷77,485)。法人税等の支払額434億51百万円も流出要因です〔①〕。
⚠️ リスク4:「受注3,000〜4,000億円」はレンジ予想であって確定受注ではない。受注残高3,229億64百万円は前期末比+2.2%にとどまっており、受注高が2.4倍になった一方で残高の増加が限定的です〔①〕。受注高には受注取消・変更等による調整額が含まれるため〔①〕、四半期ごとの受注推移で確認する必要があります。
⚠️ リスク5:バリュエーション。2026年08月10日終値39,590円ベースで、TTM(2026年6月期)実績のPERは 45.91倍、PBRは 15.12倍(1株当たり純資産2,753円84銭に対する株価倍率は14.38倍)、株価売上高倍率は 16.20倍 です(自計算。計算根拠は会社情報セクション参照)。会社予想EPS1,004円12銭ベースでは39.43倍、アナリストコンセンサスEPS1,118円36銭ベースでは35.40倍です〔①⑰⑲〕。みんかぶの株価診断は2026年08月10日時点で「割高」と表示されています〔⑲〕。
テールリスク
- 会計への疑義の履歴。 2024年06月05日、空売りファンドScorpion Capitalが334頁のレポートを公表し、在庫評価を中心に会計上の疑義を指摘しました。株価は同日7.5%下落しています〔㉑〕。会社は同06月05日に「不正会計の疑いを明確に否定する」と反論し、翌06日に数値を伴う補足説明を公表、株価は急反発しました〔㉒㉔〕。同06月28日にCFOの交代が発表され、株価は再び振れました〔㉓〕。会社の主張は一貫していますが、在庫という論点は現在も生きており、当期の棚卸資産評価損(売上原価に含まれる金額)は前期2,119百万円から 5,019百万円 へ2.4倍になっています〔①〕。
- 政策・地政学。 会社は次期の見通しで「中東情勢等の地政学リスクに伴うエネルギー価格の変動や主要国の政策動向により、不確実性の高い状況が続く」と述べています〔①〕。中国に連結子会社(Lasertec China Co., Ltd.、上海・南京・北京・厦門・天津・深圳・済南に拠点)を持つ一方、当期の地域別売上に中国単独の開示はなく、「その他アジア」310億56百万円に含まれます〔①㊳〕。米中間の輸出管理強化が特定地域向け販売を制約しうる点は構造リスクとして残ります。
- 人材集中。 2025年6月期の有価証券報告書では連結従業員1,163名、単体516名とされ、会社自身が重要人材確保リスクを挙げています〔㊲〕。
第3部:独占の持続性と会計への疑義(補完調査)
3-1. アクティニック(実波長13.5nm)EUVパターンマスク検査の商用機はACTISのみ 信頼度 中〜高
レーザーテックの半導体関連製品ページで確認できる製品系列は次の通りです〔⑬〕。
- ACTIS(A150/A200HiTシリーズ/A300シリーズ):Actinic EUV Patterned Mask Inspection System(実波長13.5nmでのEUVパターンマスク欠陥検査)
- MATRICS(X9ULTRA/X8ULTRA/X810EX/X800LITE/X712):EUV/DUV向けパターンマスク検査
- ABICS(E320/E120):EUV Mask Blanks Inspection and Review System
- MAGICS:Mask Blanks Inspection and Review System
- PELMIS:EUV Pellicle Inspection System/BASIC:EUV Mask Backside Inspection and Cleaning System/MZ100:Mask Edge Inspection System
- ウエハ検査系:SICA(SiC)、GALOIS(GaN)、CIRIUS、LX、CIEL 等
会社は沿革において、2019年に「アクティニックEUVパターンマスク欠陥検査装置 ACTIS A150(世界初)を開発・発売」、2013年に「EUV光(波長13.5nm)を用いたEUVマスクブランクス欠陥検査/レビュー装置(世界初)を開発・発売」と記載しています〔㊳〕。「世界初」は会社開示に基づき確認できますが、現時点のシェアを示す一次資料は本調査では取得できていません。
📝 株価への含意(評価):実波長検査という技術カテゴリでの先行は会社開示から確認できます。ただし「シェア100%」は一次資料で裏付けられず、後述のtarget bug trendsで撤回しています。
3-2. 競合参入の実像——市場全体ではKLAと合算65〜70%との第三者推計 信頼度 中
第三者の市場調査では、EUVマスク検査市場全体の売上について KLAとレーザーテックの2社で2025年時点の推計65〜70% を占めるとされています〔㉕〕。同レポートは、参入障壁(自社EUV光源、ナノメートル精度のステージ技術、顧客ファブへの深い統合)が高いため2034年までに市場構造が大きく変わる可能性は低いとしつつ、破壊的技術のブレークスルーがあれば例外としています〔㉕〕。
日本国内では、エー・アンド・デイ子会社の ホロン(東証スタンダード:7748) が電子ビーム技術をコアに半導体マスク製造工程の測長・欠陥レビュー装置を手掛けています〔㉜〕。規模は桁違いに小さいものの、マスク検査という同一工程での事業者です。
⚠️ 株価への含意(リスク):技術カテゴリでの先行と市場シェアは別の指標です。「実波長検査の商用機はACTISのみ」という製品面の事実と、「市場全体のシェア」という金額面の事実を混同すると、独占の強度を過大評価します。
3-3. 2024年空売りレポートの顛末と、現在も生きている在庫論点 信頼度 中〜高(一部は報道ベース)
2024年06月05日、Scorpion Capitalがレーザーテックを標的とする334頁のレポートを公表しました。在庫水準の上昇を中心に、適正に会計処理すれば2019年以降の累積利益が70%減少するという主張が含まれていたと報じられています〔㉑㉔〕。同日の株価は7.5%下落しました〔㉑〕。
会社は同日に不正会計の疑いを明確に否定し、翌06月06日には数値を伴う補足説明を公表。直近の受注動向が堅調であること、在庫の会計処理は収益認識基準に従っており、実地棚卸と長期保有在庫の調査を通じて評価減を適切に反映していることを説明しました〔㉒㉔〕。株価は補足説明の公表後に急反発しています〔㉒〕。同06月28日、会社はCFOの交代を発表しました〔㉓〕。
現在の数字で在庫論点を確認すると、次のようになります〔①〕。
| 項目 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 123,672百万円 | 122,449百万円 | −1,223百万円 |
| 原材料及び貯蔵品 | 45,333百万円 | 45,342百万円 | +9百万円 |
| 棚卸資産合計 | 169,005百万円 | 167,791百万円 | −1,214百万円 |
| 棚卸資産評価損(売上原価に含まれる額) | 2,119百万円 | 5,019百万円 | +2,900百万円(2.4倍) |
| 前受金 | 64,388百万円 | 44,284百万円 | −20,104百万円 |
| 売上高 | 251,477百万円 | 230,485百万円 | −20,992百万円 |
| 棚卸資産/売上高 | 67.2% | 72.8% | +5.6pt |
⚠️ 株価への含意(リスク):棚卸資産の絶対額はわずかに減りましたが、売上が減ったため対売上比は67.2%から72.8%へ上昇しました。評価損が2.4倍になったことは「評価減を適切に反映している」という会社説明と整合する動きでもあり、同時に在庫の質が悪化したとも読めます。どちらの解釈が正しいかを判定できる一次資料は本調査では取得できていません。2026年6月期の有価証券報告書は2026年09月24日提出予定です〔①〕。
第4部:需要先の設備投資と競合の同時点比較(補完調査)
4-1. 需要先の設備投資は増加方向で揃っている 信頼度 高
| 需要先 | 直近の設備投資/需要方針 | 時点 |
|---|---|---|
| TSMC | 2026年設備投資を520〜560億ドル→600〜640億ドルへ引き上げ。70〜80%を先端プロセスへ。通期売上成長「40%超」〔⑨〕 | 2026年07月16日 |
| ASML | 2026年売上見通しを360〜400億→430〜450億ユーロへ上方修正。2027年向けLow-NA EUV能力を30%増(約65台規模)〔⑦〕 | 2026年07月15日 |
| SK hynix | 今後2年でLow-NA EUVを20台導入計画。DRAM向けHigh-NA EUVを採用〔㉝⑧〕 | 2026年 |
| Intel | High-NA EUVを14Aノード向けに量産投入。EXE:5200の最初の顧客〔㉖⑧〕 | 2026年 |
| 装置市場全体 | SEMI予測:2026年+23.2%で1,659億ドル(過去最高)、2028年2,295億ドル〔⑤⑥㊵〕 | 2026年07月15日 |
✅ 株価への含意(プラス材料):需要先の投資方向は揃っています。ただしレーザーテックの売上は受注から検収までのラグを伴うため、需要先の設備投資増加がそのまま同期に売上化するわけではありません〔①〕。
4-2. 同一四半期(2026年04〜06月)で伸び率が真逆になっている 信頼度 高
2026年04月01日〜06月30日という同一期間で、主要装置メーカーの前年同期比は次の通りです。
| 企業 | 当該四半期の売上 | 前年同期比 | 出典 |
|---|---|---|---|
| レーザーテック(2026年6月期4Q) | 609億46百万円 | −26.3% | 〔①⑭〕自計算 |
| KLA(FY2026 Q4、6月30日締め) | 36.6億ドル | +15% | 〔㉘〕 |
| 東京エレクトロン(2027年3月期1Q) | 7,323億88百万円 | +33.3% | 〔㉙〕 |
KLAは同四半期の粗利率62.4%、GAAP純利益13億63百万ドル、GAAP希薄化後EPS 1.04ドル、2026年6月期通期売上135.8億ドル・GAAP純利益48.3億ドルを計上し、9月期のガイダンスを40.0億ドル±2.0億ドルとしています〔㉘〕。東京エレクトロンは同四半期の営業利益2,114億7百万円(+46.1%)・純利益1,643億41百万円(+39.5%)で、営業利益率は28.9%(自計算:211,407÷732,388)でした〔㉙〕。
⚠️ 株価への含意(リスク):同じ市場・同じ四半期で、レーザーテックだけが二桁減収です。会社説明のとおり前期受注の写像であるならこれは時期のズレですが、時期のズレであることを外部から検証する手段は受注データの推移しかありません〔①〕。
4-3. 会社計画とアナリスト予想の乖離 信頼度 中〜高(時点感応性が高い)
2026年08月10日時点のアナリストコンセンサス(みんかぶ集計)は次の通りです〔⑲〕。
| 項目 | 会社予想(2026年08月06日) | アナリスト予想(2026年08月10日) | 乖離 |
|---|---|---|---|
| 2027年6月期 売上高 | 290,000百万円 | 294,491百万円 | +1.5% |
| 2027年6月期 純利益 | 90,000百万円 | 100,367百万円 | +11.5% |
| 2027年6月期 EPS | 1,004.12円 | 1,118.36円 | +11.4% |
レーティングは「買い」で、内訳は強気買い8人・買い1人・中立6人・売り0人・強気売り2人(計17人)、予想株価は 49,506円(同日終値39,590円に対し+9,916円)です〔⑲〕。一方でみんかぶの株価診断は「割高」、同社の目標株価は39,671円と表示されており、指標間で方向が一致していません〔⑲〕。
📝 株価への含意(評価):アナリストは会社計画を保守的と見て純利益ベースで11.5%上を置いています。この差が埋まるか(会社が上方修正するか、アナリストが下方修正するか)が、2027年6月期第1四半期決算(2026年09月30日締め、発表は10月下旬見込み)の最初の論点です。なおこのコンセンサスは2026年08月10日時点のスナップショットで、時間感応性が高い数値です。
監視ポイント(チェックリスト)
| # | 監視項目 | 確認手段 | シグナル |
|---|---|---|---|
| 1 | 四半期の受注高 | 各四半期決算短信「ご参考資料(2)品目別受注高及び受注残高」 | 年換算で3,000億円ペース超=強気継続、2,500億円割れ=レンジ下限リスク |
| 2 | 受注残高の増加 | 同上(2026年6月期末3,229億64百万円) | 前期末比プラス継続=可視性維持、減少転換=売上化が受注を上回り先細り |
| 3 | 棚卸資産/売上高比率 | 決算短信 連結貸借対照表+損益計算書 | 72.8%から低下=現金化進展、上昇継続=検収の詰まり |
| 4 | 棚卸資産評価損 | 決算短信(連結損益計算書関係)※1 | 5,019百万円から縮小=在庫の質改善、拡大=2024年の在庫論点の再燃 |
| 5 | 前受金残高 | 決算短信 連結貸借対照表 | 442億84百万円から増加=新規大型案件の前受、減少継続=営業CFの圧迫継続 |
| 6 | サービス売上と構成比 | 決算短信「品目別販売実績」 | 構成比25%超の維持=ストック収益の定着、20%割れ=装置サイクル依存への逆戻り |
| 7 | 地域別売上(台湾・米国) | 決算短信(収益認識関係)地域別内訳 | 台湾458億円・米国516億円からの回復=ロジック向け復調、続落=顧客集中リスクの現実化 |
| 8 | 会社計画とコンセンサスの差 | 四半期決算短信の通期予想修正/IFIS・みんかぶ集計 | 会社が2,900億円/900億円を上方修正=コンセンサスへの収束、据え置きで進捗率低迷=下振れ懸念 |
| 9 | ASMLのEUV出荷・受注 | ASML四半期決算プレスリリース | 2026年60台超・2027年65台規模の維持=母数拡大、下方修正=検査需要の後ずれ |
| 10 | 研究開発費と営業利益率 | 決算短信(連結損益計算書関係)※2 | 研究開発費増でも営業利益率45%維持=価格決定力健在、40%割れ=ミックス悪化 |
引用記事一覧
第1部・第2部(メインリサーチ)
第3部(独占の持続性と会計への疑義)
| # | 記事 | 発行元・日付 |
|---|---|---|
| ㉑ | 空売り投資家スコーピオン、レーザーテック標的に-株価大幅安 | Bloomberg、2024/6/5 |
| ㉒ | レーザーテクが急反発、空売り投資家レポートに対する補足説明公表で買い戻し | 株探、2024/6/7 |
| ㉓ | 狙われたレーザーテック CFO交代に勢いづく空売りファンド | 日経ビジネス、2024/7/11 |
| ㉔ | レーザーテック 空売り投資家からの不正会計の疑いに反論 難しい対応の方向性 | 監査役ニュース、2024/6(分析ブログ) |
| ㉕ | EUV Mask Inspection Market Size, Share, Trends, Forecast-2035 | GM Insights(市場調査) |
| ㉖ | ASML Confirms First High-NA EUV EXE:5200 Shipment, Reportedly Prepping for Intel’s 14A in 2027 | TrendForce、2025/7/17 |
| ㉗ | レーザーテック──“EUV独占”の終わりと次の覇権構造 | RONPYO、2025/10/22(2026/6/13更新)※数値が決算短信と不整合のため本レポートでは不採用(留意点6参照) |
第4部(競合・需要先)
| # | 記事 | 発行元・日付 |
|---|---|---|
| ㉘ | KLA CORPORATION REPORTS FISCAL 2026 FOURTH QUARTER AND FULL YEAR RESULTS | KLA/PR Newswire、2026/7/28 |
| ㉙ | 2027年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結) | 東京エレクトロン、2026/7/30 |
| ㉚ | Applied Materials Announces Second Quarter 2026 Results | Applied Materials/GlobeNewswire、2026/5/14 |
| ㉛ | Applied Materials Q2 FY 2026: AI Capacity Expansion Fuels Equipment Demand | Futurum Group、2026/5 |
| ㉜ | ホロン(7748):株式・株価、企業概要 | 株予報Pro(IFIS) |
| ㉝ | SK hynix adopts next-generation HNA-EUV ASML production equipment for DRAM | SemiWiki |
| ㉞ | SK Hynix Slows Down HBM4 Ramp, Prepares 300+ Layer NAND Flash | TechPowerUp |
| ㉟ | KLA Corporation (KLAC) Number of Employees | stockanalysis.com、2026/8/10 |
会社情報・その他
| # | 記事 | 発行元・日付 |
|---|---|---|
| ㊱ | レーザーテック株式会社 有価証券報告書 全文 | EDINET DB(2024年6月期有価証券報告書) |
| ㊲ | レーザーテックの将来性|EUV独占×ROE46.9%の強みとリスク | 就活×有報ナビ(2025年6月期有価証券報告書の要約・分析ブログ) |
| ㊳ | 会社概要(2026年3月版) | レーザーテック、2026/3 |
| ㊴ | EUVマスク関連検査装置 | レーザーテック(IR個人投資家向け) |
| ㊵ | 2028年の半導体製造装置市場は2295億ドルへ、SEMIが半導体製造装置の2026年央市場予測を発表 | マイナビニュース、2026/7/15 |
会社情報
Lasertec Corporation(レーザーテック株式会社)
- 証券取引所/銘柄コード:東京証券取引所プライム市場 / 6920
- 業種:電気機器(半導体・FPD関連検査装置)
- 資本金:931百万円(9億3,100万円)
- 創業:1960年07月
- 従業員数:約1,163人(2025年06月30日時点・2025年6月期有価証券報告書。単体516人)〔㊲〕
- 時価総額(百万円):3,732,799(約3.73兆円)
- 売上高(百万円):230,485(TTM=直近4四半期合計=2026年6月期通期)
- 企業価値(EV)(百万円):3,641,296(時価総額3,732,799+有利子負債0−現金及び短期投資91,503)
- 当期純利益(百万円):77,485(TTM・日本基準・親会社株主に帰属する当期純利益)
- EBITDA(百万円):109,933(TTM。営業利益105,259+減価償却費4,674。いずれも開示実績値)
決算日(四半期ごと):
- 第1四半期(1Q):09月(09月30日締め。直近実績=2025年09月30日、発表2025年10月31日)
- 第2四半期(2Q):12月(12月31日締め。中間期。直近実績=2025年12月31日、発表2026年01月30日)
- 第3四半期(3Q):03月(03月31日締め。直近実績=2026年03月31日、発表2026年04月30日)
- 第4四半期(4Q):06月(06月30日締め。通期。直近実績=2026年06月30日、発表2026年08月06日)
- 次回:2027年6月期第1四半期(2026年09月30日締め)。定時株主総会は2026年09月25日、有価証券報告書提出予定日は2026年09月24日、配当支払開始予定日は2026年09月28日〔①〕
事業内容:半導体関連装置・FPD関連装置・レーザー顕微鏡の開発・製造・販売・サービス。売上の72.9%が半導体関連装置、25.4%がサービス、1.6%がその他の製品(2026年6月期)。主力は極端紫外線(EUV)リソグラフィ用フォトマスクの欠陥検査装置群で、実波長13.5nmでのパターンマスク検査(ACTIS A150/A200HiT/A300)、マスクブランクス検査(ABICS/MAGICS)、DUV/EUVパターンマスク検査(MATRICS)、ペリクル・裏面・エッジ検査(PELMIS/BASIC/MZ100)を揃える。SiC・GaN等の化合物半導体ウエハ検査(SICA/GALOIS)にも展開。事業セグメントは「検査・測定装置の設計、製造、販売」の単一セグメント。連結子会社は米国・韓国・台湾・中国・シンガポールの5社〔①⑬㊳〕。
[財務指標(実績)]
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 粗利益率(%) | 59.21 |
| ROE(%) | 31.39 |
| 株価売上高倍率 | 16.20 |
| PER(倍) | 45.91 |
| PBR(倍) | 15.12 |
※2026年06月30日締め(第4四半期・通期)までの直近4四半期(TTM)の実績データを基に算出しています。TTMは2026年6月期通期(2025年07月01日〜2026年06月30日)と完全に一致します。
※株価は、2026年08月10日の終値(39,590円)を用いています〔⑰⑱〕。
※粗利益率=売上総利益136,479÷売上高230,485×100。売上総利益136,479は決算短信の開示値です(売上高230,485−売上原価94,005=136,480となりますが、決算短信は各項目を百万円未満切捨てで表示しているため1百万円の差が生じます)〔①〕。
※ROE=TTM純利益77,485÷期末自己資本246,828×100=31.39%(期末資本ベース)。会社が決算短信で開示する自己資本当期純利益率33.9%は期中平均自己資本ベースであり、当期は自己資本が209,878百万円から246,828百万円へ増加したため、期末ベースの本値の方が低く出ます〔①〕。
※株価売上高倍率=時価総額3,732,799÷TTM売上高230,485=16.20。
※PER=株価39,590円÷TTM希薄化後EPS 862.26円=45.91倍。会社予想EPS 1,004.12円ベースでは39.43倍(Yahoo!ファイナンス表示値39.43倍と一致)〔①⑰〕。
※PBR=時価総額3,732,799÷自己資本246,828=15.12倍。株価39,590円÷1株当たり純資産2,753.84円=14.38倍(Yahoo!ファイナンス表示値14.38倍と一致)で、差は自己株式4,655,734株の扱いによるものです。時価総額は期末発行済株式数94,286,400株(自己株式を含む)ベース、1株当たり純資産は自己株式控除後の89,630,666株ベースで会社が算定しています〔①⑰〕。
※時価総額の突合:39,590円×94,286,400株=3,732,799百万円。Yahoo!ファイナンス表示値3,732,799百万円と完全一致〔⑰〕。自己株式控除後(89,630,666株)ベースでは3,548,478百万円です。
※有利子負債はゼロとして計算しています。連結貸借対照表に借入金の計上はなく、当期の支払利息は計上ゼロ、取引銀行2行との貸出コミットメント総額40,000百万円は借入実行残高ゼロです。ただしリース資産(純額)136百万円に対応するリース債務は個別開示がなく、流動負債「その他」8,082百万円・固定負債「その他」121百万円に含まれている可能性があります〔①〕。
※現金及び短期投資は現金及び預金91,503百万円のみを使用しています。投資有価証券1,538百万円は固定資産であるため除外しました〔①〕。
[1株当たりデータ]
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 1株当たり売上高(円) | 2,571.50 |
| EPS(円) | 862.99(TTM・日本基準・基本)/862.26(同・希薄化後) |
| 1株当たり純資産(円) | 2,753.84 |
| 1株当たり現金及び短期投資(円) | 1,020.89 |
| 1株当たりキャッシュフロー(円) | 541.56(営業キャッシュ・フロー・TTM) |
| 1株当たり配当(円) | 329.00(2026年6月期年間実績=中間132.00円+期末197.00円。2027年6月期会社予想は351.00円) |
※2026年06月の実績データを基に算出しています(期末発行済株式数94,286,400株から期末自己株式数4,655,734株を控除した 89,630,666株 を使用。会社が開示する1株当たり純資産2,753.84円および1株当たり当期純利益862.99円と整合する株式数ベースです)。
※EPSおよび1株当たり純資産は決算短信の開示値をそのまま採用しています。1株当たり当期純利益862.99円は期中平均株式数89,787,809株ベース、潜在株式調整後862.26円は普通株式増加数75,998株(新株予約権)を加味した値です〔①〕。
※1株当たり売上高=230,485百万円÷89,630,666株=2,571.50円。1株当たり現金及び短期投資=91,503百万円÷89,630,666株=1,020.89円。1株当たりキャッシュフロー=営業キャッシュ・フロー48,540百万円÷89,630,666株=541.56円。
※1株当たり配当は年率換算ではなく、2026年6月期の年間配当実績(中間+期末)の実額です。配当性向は38.1%、配当金総額は29,488百万円〔①〕。2026年08月10日終値39,590円に対する配当利回りは実績ベースで0.83%、2027年6月期会社予想ベースで0.89%です。
主要データ出典
- レーザーテック 2026年6月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(TDnet、2026/8/6)〔①〕
- レーザーテック 2026年6月期 第3四半期決算短信(2026/4/30)〔⑭〕
- レーザーテック 2026年6月期 第2四半期(中間期)決算短信(2026/1/30)〔⑮〕
- レーザーテック 2026年6月期 第1四半期決算短信(2025/10/31)〔⑯〕
- レーザーテック 会社概要(2026年3月版)(2026/3)〔㊳〕
- 株価・株式情報(Yahoo!ファイナンス、2026/8/10)〔⑰〕・時系列株価(株探、2026/8/10)〔⑱〕
決算速報
2026年6月期通期(2025年07月01日〜2026年06月30日)および第4四半期(2026年04月01日〜06月30日)|2026年08月06日発表
通期の売上高は 230,485百万円(前期比 −8.3%)、売上総利益136,479百万円で粗利益率59.21%(前期58.95%から0.26pt改善)、営業利益 105,259百万円(同 −14.3%) で営業利益率45.7%(前期48.8%)、経常利益107,895百万円(同 −9.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益 77,485百万円(同 −8.5%)、1株当たり当期純利益862円99銭(希薄化後862円26銭)でした。減収の主因は会社説明のとおり前期の受注不振(前期受注高105,226百万円)で、品目別では半導体関連装置が168,090百万円(−17.2%)と落ち込む一方、サービスが58,646百万円(+36.5%)と伸びています。営業利益率の低下は研究開発費が11,677百万円から 16,292百万円(+39.5%) へ増加し販管費が25,413百万円から31,220百万円へ膨らんだことが効いています。営業キャッシュ・フローは48,540百万円(前期77,874百万円)で、前受金の減少 −21,120百万円と法人税等の支払額 −43,451百万円が主な流出要因です。バランスシートでは棚卸資産合計167,791百万円(仕掛品122,449+原材料及び貯蔵品45,342)が売上高の72.8%に相当する高水準で残り、前受金は64,388百万円から44,284百万円へ減少、自己資本比率は63.7%から 73.3% へ上昇しました。借入金はなく、貸出コミットメント40,000百万円は全額未使用です〔①〕。第4四半期単独(累計値の差分による自計算)は売上高60,946百万円(前四半期比 +47.6%、前年同期比 −26.3%)、営業利益27,068百万円(営業利益率44.4%)、純利益20,662百万円でした〔①⑭〕。
最大の前進は受注です。通期受注高は 237,504百万円(前期比 +125.7%)、うち半導体関連装置172,216百万円(+208.5%)、サービス61,791百万円(+35.8%)。期末受注残高は322,964百万円(前期末比 +2.2%)でした〔①〕。2027年6月期の会社ガイダンスは売上高 290,000百万円(+25.8%)、営業利益 125,000百万円(+18.8%)、経常利益125,000百万円、純利益 90,000百万円(+16.2%)、EPS 1,004円12銭で、いずれも過去最高となる水準です。年間配当予想は22円増配の351円(中間140円+期末211円)、配当性向35.0%です。会社は「半導体業界では、AI関連への積極的な投資を背景に、先端半導体の需要が引き続き高水準で推移することが見込まれる」とする一方、「中東情勢等の地政学リスクに伴うエネルギー価格の変動や主要国の政策動向により、不確実性の高い状況が続く」としています〔①〕。受注高については3,000〜4,000億円のレンジ予想が示されました〔③⑳〕。決算に対する株価反応は厳しく、発表は2026年08月06日の取引終了後(15時45分)で〔⑳〕、翌08月07日の東京市場で株価は前日比5,870円安(−13.55%)の37,460円まで下落、売買高は5,470,200株に膨らみました〔⑱〕。フィスコは営業利益ガイダンス1,250億円に対し「コンセンサスは1,380億円程度であったとみられ、やや下振れる形になっている」、受注レンジについても「事前の市場期待は4,000億円程度に上昇していたとみられる」と伝えています〔③〕。08月10日は前日比2,130円高(+5.69%)の39,590円まで戻しました〔⑰⑱〕。
*会社通期予想からの推計(四半期業績予想は非開示)。推計式:売上高=290,000÷4=72,500百万円(725.00億円)、純利益=90,000÷4=22,500百万円(225.00億円)〔①〕。
| 四半期(期末日) | 売上高 | 前四半期比 | 日本基準 親会社株主帰属純利益 | 希薄化後EPS |
|---|---|---|---|---|
| 2025年6月期4Q(2025年06月30日) | 82,642百万円 | — | 31,958百万円 | 354.34円 |
| 2026年6月期1Q(2025年09月30日) | 54,171百万円 | −34.4% | 19,057百万円 | 211.28円 |
| 2026年6月期2Q(2025年12月31日) | 74,087百万円 | +36.8% | 26,688百万円 | 296.90円 |
| 2026年6月期3Q(2026年03月31日) | 41,281百万円 | −44.3% | 11,078百万円 | 123.78円 |
| 2026年6月期4Q(2026年06月30日) | 60,946百万円 | +47.6% | 20,662百万円 | 230.30円 |
| 2027年6月期 四半期平均(ガイダンスからの推計) | 72,500百万円 | +19.0% | 22,500百万円 | 251.03円 |
※2026年6月期および2025年6月期の四半期単独値は、会社が開示する累計値の差分から算出しています。2Q=中間期128,258−1Q 54,171、3Q=3Q累計169,539−中間期128,258、4Q=通期230,485−3Q累計169,539。2025年6月期4Q=通期251,477−3Q累計168,835〔①⑭⑮⑯〕。会社は第4四半期単独値を決算短信に直接掲載していないため、上表の4Q値は自計算です。
※希薄化後EPSの四半期値も同様に潜在株式調整後の累計値の差分です(1Q 211.28、中間期508.18、3Q累計631.96、通期862.26)。四半期ごとに期中平均株式数が異なるため、厳密な加重平均とは一致しません。基本EPSベースの差分では1Q 211.46円・2Q 297.15円・3Q 123.88円・4Q 230.50円となります〔①⑭⑮⑯〕。
※グラフおよび上表の「純利益」は親会社株主に帰属する(四半期)純利益です。
※「2027年6月期 四半期平均」は会社ガイダンスからの推計です。会社は四半期単独の業績予想を開示していないため、通期予想を4等分しました。推計式:売上高=290,000÷4=72,500百万円、純利益=90,000÷4=22,500百万円、EPS=1,004.12÷4=251.03円〔①〕。実際の四半期業績は装置の検収時期により大きく変動します(2026年6月期の四半期売上は41,281百万円〜74,087百万円のレンジ、最大/最小=1.79倍)。
※通期業績予想は期中に上方修正されています。2026年6月期の会社予想は期初の売上高200,000百万円・営業利益85,000百万円・純利益60,000百万円から、2026年01月30日に「一部製品の売上検収の前倒しと為替変動の影響」を理由に220,000百万円・100,000百万円・72,000百万円へ引き上げられ、実績は230,485百万円・105,259百万円・77,485百万円で修正後予想もそれぞれ+4.8%・+5.3%・+7.6%上回りました〔①⑭⑮⑯〕。
競合比較(5社)
比較元のレーザーテック(6920)を ★3 とした場合の相対評価(★5つで評価)。本評価は本調査(フェーズ1・2)で確認した事実に基づく定性評価であり、投資推奨ではありません。評価軸は、(1)主力市場での規模とシェア、(2)直近開示四半期の成長モメンタム、(3)価格決定力・契約構造(利益率)、(4)AI/先端ノードという成長テーマへの露出の4点です。
| 証券取引所/銘柄コード | 会社名 | 企業スコア | 評価の根拠 |
|---|---|---|---|
| 東証プライム / 6920 | レーザーテック(比較元) | ★★★☆☆ | 実波長13.5nmのアクティニックEUVパターンマスク検査で商用機はACTIS系列のみという製品面の先行を持ち、通期営業利益率45.7%・ROE31.4%(期末資本ベース)・自己資本比率73.3%・実質無借金という収益性と財務は同業でも上位。ただし2026年6月期は売上 −8.3%・営業利益 −14.3%の減収減益で、同一四半期(2026年04〜06月)に主要3社中で唯一の二桁減収。上位顧客3社への依存が約79%、棚卸資産が年商の72.8%〔①㉕㊲〕 |
| NASDAQ / ASML | ASML Holding N.V. | ★★★★★ | EUV露光装置を独占供給し、レーザーテックの需要そのものを規定する上流。2026年第2四半期は売上93億ユーロ・粗利率54.0%・純利益29億ユーロで、通期売上見通しを360〜400億→430〜450億ユーロへ上方修正。2027年向けにLow-NA EUV能力を30%増(約65台規模)へ拡張、CEOは2026年上期の受注を「極めて強い」と表現。規模・上流ポジション・可視性のいずれもレーザーテックを上回る〔⑦⑧〕 |
| NASDAQ / KLAC | KLA Corporation | ★★★★☆ | 検査・計測装置の世界最大手で、マスク検査を含む最も直接的な競合。2026年6月期(レーザーテックと同一の6月決算)は売上135.8億ドル・GAAP純利益48.3億ドルで、レーザーテック(2,304億85百万円・774億85百万円)の約6倍規模。同一四半期(4〜6月)は売上36.6億ドルで +15% と増収、粗利率62.4%。9月期ガイダンスは40.0億ドル±2.0億ドル。ただし第三者推計ではEUVマスク検査市場でレーザーテックと合算65〜70%であり、実波長検査カテゴリでの商用機投入は確認できていない〔㉕㉘㉟〕 |
| 東証プライム / 8035 | 東京エレクトロン | ★★★★☆ | 同国最大手の総合装置メーカー。2027年3月期第1四半期(2026年04〜06月、レーザーテックの4Qと同一期間)は売上7,323億88百万円(+33.3%)・営業利益2,114億7百万円(+46.1%)・純利益1,643億41百万円(+39.5%)で、営業利益率28.9%。同一期間・同一市況でレーザーテックが −26.3%だったのと対照的。ただし営業利益率はレーザーテックの45.7%を大きく下回り、棚卸資産/売上高比率も25.7%(直近四半期年率換算ベース)で、レーザーテックの72.8%と収益構造・在庫構造の両面で異質〔①㉙〕 |
| NASDAQ / AMAT | Applied Materials, Inc. | ★★★★☆ | 成膜・エッチングを主力としつつeBeam検査・計測で隣接する巨大競合。2026年度第2四半期(〜2026年5月)は売上79億ドル(+11%)、うち半導体システム60億ドル(+14%)、non-GAAP営業利益率32.1%。暦年2026年の半導体装置市場成長率の想定を +30%超 へ引き上げており、市場観は強気。マスク検査という特定工程ではレーザーテックの牙城に届いていないが、資本力と顧客カバレッジで長期の参入圧力を持つ〔㉚㉛〕 |
| 東証スタンダード / 7748 | ホロン | ★★☆☆☆ | 計測器メーカーのエー・アンド・デイ子会社。電子ビーム技術をコアに半導体マスク製造工程の微小寸法測定装置・欠陥レビュー装置を開発・製造・販売しており、マスク検査という同一工程での日本国内の事業者。ただし事業規模はレーザーテックとは桁が異なり、実波長EUVパターンマスク検査での商用機投入は確認できていない〔㉜〕 |
target bug trends
本セクションは、本レポートのS5〜S12で検証済みのデータのみを横断し、「おかしなこと(アノマリー)」「飛び抜けたこと(外れ値)」「競合比較(5社)と圧倒的に違うこと」を抽出したうえで、2026年08月10日に反証検証を実施した結果です。12論点について、各主張を否定する反例・対抗仮説を個別の検索クエリで探索し外部ソースと照合したうえで、支持7・要修正4・棄却1と判定しました。判定に基づいて本文を書き直しています。本セクションは事実の整理であり、投資推奨ではありません。
おかしなこと(アノマリー)
装置市場が+23.2%成長する年に、売上は−8.3%【再検証で修正】
SEMIは2026年の半導体製造装置市場を前年比+23.2%の1,659億ドル(過去最高)と予測しています〔⑤⑥〕。同時期にあたるレーザーテックの2026年6月期は売上高 −8.3%・営業利益 −14.3%の減収減益でした〔①〕。
📝 → 初稿では「業界と逆行する矛盾」と表現しましたが、反証検証で修正しました。対抗仮説として「受注から売上計上までのラグ」を検討したところ、会社自身が決算短信で「前期の受注高の影響から連結売上高は2,304億85百万円(前年同期比8.3%減少)となりました」と明記しており、当期売上は前期受注高1,052億26百万円の写像であることが一次資料で確認できます〔①〕。したがって「矛盾」ではなく、「装置市場のピークと当社の売上のピークが1年ずれる構造」という事実の指摘に書き改めます。逆に言えば、当期受注2,375億4百万円は来期以降の売上に効きます。
受注が2.4倍になった決算で、株価は1日で−13.55%【検証済み】
同一の決算発表(2026年08月06日)に、受注高 +125.7%(半導体関連装置 +208.5%)という過去水準からの大幅回復と、翌営業日の株価 −13.55%(5,870円安、売買高5,470,200株)が同居しています〔①⑱〕。理由は「実績」ではなく「計画の水準」でした。営業利益ガイダンス1,250億円に対し発表前コンセンサスは1,380億円程度、受注レンジ3,000〜4,000億円に対し事前の市場期待も4,000億円程度に上昇していたとされ、いずれも上限=期待線という着地です〔③〕。過去最高益計画を出しながら「物足りない」と評価された決算です〔②④〕。
営業キャッシュ・フローが純利益の62.6%。前受金が211億円逆流した【検証済み】
純利益774億85百万円に対し営業キャッシュ・フローは485億40百万円で、比率は 62.6% です(自計算)。差の主因は前受金の増減額 −211億20百万円 と法人税等の支払額 −434億51百万円です〔①〕。貸借対照表上でも前受金は643億88百万円から442億84百万円へ減っています。受注は回復した一方で、過去の前受金は売上計上とともに取り崩されており、「受注の回復」と「前受金の減少」が同じ期に起きている構図です。
棚卸資産の絶対額は減ったのに、評価損は2.4倍になった【検証済み】
棚卸資産合計は169,005百万円から167,791百万円へ1,214百万円減少しました。一方、売上原価に含まれる棚卸資産評価損(戻入額と相殺後)は前期2,119百万円から当期 5,019百万円 へ2.4倍に増えています〔①〕。この2つは同じ方向を向いていません。会社は2024年の空売りレポートへの反論で「実地棚卸と長期保有在庫の調査を通じて評価減を適切に反映している」と説明しており〔㉒㉔〕、評価損の増加はその説明と整合する動きとも、在庫の質の悪化とも読めます。判定材料となる一次資料は本調査では取得できていません。
飛び抜けたこと(外れ値)
棚卸資産が年商の72.8%【再検証で修正】
期末の棚卸資産167,791百万円(仕掛品122,449+原材料及び貯蔵品45,342)は、年間売上高230,485百万円の 72.8% に相当します。仕掛品単独でも売上の53.1%です〔①〕。
📝 → 初稿では「異常な水準」と表現しましたが、反証検証で修正しました。比較対象として同じ2026年06月30日時点の東京エレクトロンを算出すると、棚卸資産751,551百万円(商品及び製品289,501+仕掛品240,417+原材料及び貯蔵品221,633)に対し直近四半期の年率換算売上2,929,552百万円で 25.7% です〔㉙〕。レーザーテックは業界比 約2.8倍 の水準ですが、対抗仮説として検討した「受注残1.11年分・検収基準・前受金442億84百万円という受注生産モデル」で相当部分が説明可能であり、「異常」ではなく 「東京エレクトロンの約2.8倍という受注生産型の極端形」 と書き改めます。監視すべきは水準そのものではなく、比率の方向(低下か上昇か)です。
減益の年でも営業利益率45.7%【検証済み】
2026年6月期は営業利益 −14.3%の減益でしたが、営業利益率は 45.7%(前期48.8%)を維持しました〔①〕。同一四半期の東京エレクトロンの営業利益率は28.9%(自計算:211,407÷732,388)〔㉙〕、ASMLの2026年第2四半期の粗利率は54.0%〔⑦〕、KLAの同四半期の粗利率は62.4%です〔㉘〕。粗利益率はレーザーテックが59.21%で〔①〕、KLAの62.4%を下回りASMLの54.0%を上回る位置ですが、粗利から営業利益への転換効率(販管費比率13.5%=31,220÷230,485)が高い点が45.7%という営業利益率の源泉です。研究開発費を39.5%積み増したうえでの水準です。
従業員1人当たり売上1.98億円【再検証で修正】
連結従業員1,163名(2025年06月30日時点)で売上高230,485百万円は、1人当たり 198.2百万円 です〔①㊲〕。
📝 → 初稿では「製造業の常識を覆す水準」と表現しましたが、反証検証で修正しました。反例を探すため同業の1人当たり売上を算出すると、KLAは2026年6月期売上135.8億ドル÷従業員約17,000名=約798千ドル(1ドル150円換算で約120百万円)〔㉘㉟〕で、レーザーテックはその 約1.65倍 です。「常識を覆す」ではなく 「検査装置最大手KLAの約1.65倍」 と具体化します。ただし倍率の一部は構造要因であり、レーザーテックが製造の相当部分を外部委託していることと、従業員数がグループ売上を1年遅れの母数で捉えている(従業員数は2025年6月期有報の値)ことを差し引いて読む必要があります。
日次±10%前後の値動きが18営業日で5回【検証済み】
2026年07月15日から08月10日までの18営業日で、日次騰落率の絶対値が9.5%を超えた日が5回あります:07月15日 +10.18%、07月17日 −9.66%、07月28日 −14.05%、07月31日 +12.76%、08月07日 −13.55%〔⑱〕。52週レンジは安値28,660円(2026年02月05日)〜高値58,580円(2026年06月19日)で、高値からの下落率は −32.4%、安値からの上昇率は +38.1%です(自計算)〔⑰〕。時価総額3.7兆円規模の銘柄としては極端な変動性です。
競合比較(5社)と圧倒的に違うこと
同一四半期(2026年04〜06月)で、主要3社中ただ1社の二桁減収【検証済み】
完全に同一の3か月間で、レーザーテックは −26.3%(609億46百万円)、KLAは +15%(36.6億ドル)、東京エレクトロンは +33.3%(7,323億88百万円)でした〔①⑭㉘㉙〕。決算期の違いによる期間ズレを排除した比較で、方向が逆になっているのはレーザーテックだけです。会社説明のとおり前期受注の写像であるなら時期のズレですが、KLAも東京エレクトロンも同じ検収・売上計上の仕組みを持つ受注生産型であり、「ラグの長さが他社より長い」ことが差の説明になります。この差が来期に反転するかが最大の論点です。
上位顧客3社で約79%【再検証で修正】
2025年6月期の有価証券報告書における主要な相手先別の販売実績は、Intel・TSMC・Samsung Electronicsの3社で 約79.4% とされています〔㊲〕。2024年6月期はTSMC 31.9%・Intel 27.7%・Samsung 23.0%の計82.6%でした〔㊱〕。
📝 → 初稿では「現在も3社で79%」と現在形で書きましたが、反証検証で修正しました。帰属の観点で照合すると、79.4%は 2025年6月期の数値 であり、2026年6月期には地域別売上で台湾 −29.7%・米国 −24.0%・欧州 −61.8%に対し韓国 +23.2%・日本 +36.0%・その他アジア +31.5%という大きなシフトが起きています〔①〕。2026年6月期の顧客別構成は変動している可能性が高く、確認できるのは 2026年09月24日提出予定の2026年6月期有価証券報告書 です〔①〕。したがって「上位3社で約79%」は2025年6月期時点の数値として扱います。なお2026年6月期の海外売上比率87.8%は決算短信の地域別開示から自計算で確認できます〔①〕。
実質無借金で、400億円のコミットメントラインを1円も使っていない【検証済み】
連結貸借対照表に借入金の計上はなく、当期の支払利息は計上ゼロ、自己資本比率73.3%、現金及び預金915億3百万円。取引銀行2行との貸出コミットメント総額 40,000百万円 に対する借入実行残高は ゼロ で、差引額40,000百万円が全額未使用です〔①〕。減収減益・営業CFが純利益の62.6%という年に、研究開発費を39.5%増やし、自己株式を120億3百万円取得し、配当を311億31百万円支払ってなお、この財務です。比較対象として東京エレクトロン(自己資本比率71.7%)〔㉙〕と近い水準ですが、コミットメントライン全額未使用という点は財務余力の指標として特徴的です。
「EUVマスク検査で世界シェア100%の独占」は撤回する【撤回・書き直し】
⚠️ → 初稿の「EUVマスク検査で世界シェア100%を握る独占企業」という主張は、検証の結果撤回する。反例探索の結果、(1) この数字の出所は分析ブログ・解説記事であり一次資料(会社開示・調査会社原典)に到達できなかった、(2) 会社自身が公表しているのは「世界初」という開発時点の主張であり〔㊳〕現在のシェアではない、(3) 第三者の市場調査ではEUVマスク検査市場全体の売上について KLAとレーザーテックの2社合算で2025年時点の推計65〜70% とされている〔㉕〕、という3点が確認されました。
正しい整理は次の通りです。製品系列から確認できるのは「実波長13.5nmでのアクティニックEUVパターンマスク欠陥検査装置として商用提供されているのはACTIS系列(A150/A200HiT/A300)である」という点までであり〔⑬⑩⑪⑫〕、これは「EUVマスク検査市場のシェア」とは別の指標です。マスク検査という工程にはブランクス検査(ABICS/MAGICS)、DUV/EUVパターンマスク検査(MATRICS)、ペリクル・裏面・エッジ検査など複数のカテゴリがあり、KLAは同一工程で最大手として競合しています〔㉕㉘〕。独占の強度を評価する際は、技術カテゴリでの先行と金額シェアを分けて読む必要があります。
※検証方法:本セクションの12論点について、各主張を否定する反例・対抗仮説を論点ごとに個別の検索クエリで探索し、外部ソースおよび一次資料と照合しました。判定内訳は支持7・要修正4・棄却1です。主な検証出典:レーザーテック 2026年6月期決算短信(一次資料。数値・算術の逐語照合)、東京エレクトロン 2027年3月期第1四半期決算短信(棚卸資産比率・営業利益率の反例)、KLA FY2026 Q4決算(同一四半期の伸び率・1人当たり売上の反例)、GM Insights EUV Mask Inspection Market(シェア100%主張の反例)、SEMI 2026年央市場予測(装置市場成長率)、株探 時系列株価(日次騰落率の実測)。
※情報の質の非対称性への留意:本セクションの数値のうち、レーザーテック・東京エレクトロンの財務数値は法定開示(決算短信)ベース、KLA・ASML・Applied Materialsの数値は各社プレスリリースベース、顧客集中度・従業員数・EUVマスク検査市場シェア・受注高レンジ予想は二次情報または第三者推計ベースです。開示ベースの数値と報道・推計ベースの数値を同じ精度で比較することはできません。特に受注高レンジ予想(3,000〜4,000億円)と品目別受注内訳は決算説明会資料に基づく数値で、本レポートはフィスコ配信〔③〕および分析ブログ〔⑳〕を経由して把握しており、一次資料での確認は未達です。
調査上の留意点・未解決事項
- 検証レベルの差。 第1部・第2部は複数系統の独立照合(一次資料の逐語確認・算術検算・反例探索)を通過した主張で構成しています。第3部・第4部は補完調査であり、検証の厳格さが一段劣ります。特に第3部3-2(競合参入の実像)と3-3(空売りレポートの顛末)は報道・第三者推計に依存する部分が大きく、信頼度は「中」〜「中〜高」です。
- データソースの偏り。 装置市場の成長率はSEMIの予測に依存しています(2026年+23.2%/1,659億ドル、2028年2,295億ドル)〔⑤⑥㊵〕。EUV露光機の出荷台数見通しはASMLの開示および同社を報じた二次情報に依存しています〔⑦⑧〕。EUVマスク検査市場のシェア推計はGM Insightsの単一調査会社に依存しています〔㉕〕。いずれも代替の独立推計を取得できていません。
- 時間感応性の高いデータ。 アナリストコンセンサス(2027年6月期 売上294,491百万円・純利益100,367百万円・EPS 1,118.36円、予想株価49,506円、レーティング内訳)はすべて 2026年08月10日時点のスナップショット です〔⑲〕。決算発表(2026年08月06日)直後で改定途上にあり、短期間で変動します。フィスコが伝えた発表前コンセンサス(営業利益1,380億円程度、受注期待4,000億円程度)は「〜とみられる」という推定表現で書かれた数値であり、集計機関・集計日が特定されていません〔③〕。
- ソース間の数値不一致。 (a) ROEは本レポートの自計算値31.39%(期末自己資本ベース)と会社開示値33.9%(期中平均自己資本ベース)が異なります。当期は自己資本が209,878百万円から246,828百万円へ17.6%増加したため差が拡大しています〔①〕。(b) PBRは自計算値15.12倍(時価総額÷自己資本)と、株価÷1株当たり純資産=14.38倍が異なります。差は自己株式4,655,734株の扱いによるもので、時価総額は期末発行済株式数94,286,400株ベース、1株当たり純資産は自己株式控除後89,630,666株ベースです〔①⑰〕。(c) 希薄化後EPSの四半期差分(1Q 211.28+2Q 296.90+3Q 123.78+4Q 230.30=862.26)と基本EPSの四半期差分(211.46+297.15+123.88+230.50=862.99)はいずれも通期開示値と一致しますが、四半期ごとの期中平均株式数の違いにより四半期値は厳密な加重平均ではありません。
- 単一ソース・未確認の報道。 (a) 2027年6月期の受注高レンジ予想3,000〜4,000億円は決算短信に記載がなく、フィスコ配信〔③〕と分析ブログ〔⑳〕を経由した決算説明会資料ベースの数値です。一次資料での確認は未達です。(b) ACTIS 620億円/MATRICS 772億円という品目別受注内訳、2027年6月期の半導体関連装置売上2,250億円計画・サービス615億円計画、第4四半期サービス売上約165億83百万円も同じく〔⑳〕経由で、一次資料未確認のため本文では参考扱いとしています。(c) 決算発表時刻15時45分は〔⑳〕の記載で、決算短信PDFには時刻の記載がありません。ただし08月06日終値43,330円(−7.18%)に対し翌07日が −13.55%という値動きは引け後発表と整合します〔⑱〕。(d) 顧客集中度(Intel・TSMC・Samsungで約79.4%)と連結従業員数1,163名は2025年6月期有価証券報告書の数値ですが、本レポートは二次情報〔㊲〕経由で把握しており、有価証券報告書原文にはアクセスできていません。2024年6月期分は原文ベースで確認済みです〔㊱〕。
- 検証で棄却され不採用とした主張。 (a) 「EUVマスク検査で世界シェア100%」 — 一次資料に到達できず、第三者推計では市場全体でKLAと合算65〜70%とされるため撤回しました(target bug trends参照)〔㉕〕。(b) RONPYO「レーザーテック──“EUV独占”の終わりと次の覇権構造」〔㉗〕の全数値 — 同記事は2024年7月〜2025年6月期の実績として売上高210,458百万円・営業利益130,352百万円・総資産438,950百万円・自己資本比率80.2%・現金及び預金210,678百万円・研究開発費約22,000百万円(売上比10.5%)を掲げていますが、決算短信の同期間実績は売上高251,477百万円・営業利益122,843百万円・総資産329,601百万円・自己資本比率63.7%・現金及び預金86,087百万円で、いずれも大きく乖離します〔①〕。研究開発費も決算短信の開示値は11,677百万円(売上比4.6%)です〔①〕。同記事の「上位3社で7割以上」「海外売上約95%」といった定性主張も検証できず(海外売上比率の実測は87.8%)、同記事の数値・主張は本レポートでは一切採用していません。定性的な論点整理(独占の持続性、顧客集中、データ企業化)の枠組みのみ、他ソースで裏付けを取り直したうえで参照しています。(c) アナリストレーティング関連の記事 — 検索で「目標株価67,000円へ引き上げ」「57,000円へ引き上げ」「47,200円へ引き上げ」等の記事が上位に現れましたが、原文を確認したところ いずれも2024年の記事 であり、2026年08月の決算を反映したものではありませんでした。本レポートでは採用せず、2026年08月10日時点のみんかぶ集計〔⑲〕のみを使用しています。
- 会社情報セクションの計算前提。 (a) 株価は 2026年08月10日終値39,590円(15時30分時点の大引け値)〔⑰⑱〕。(b) 時価総額は期末発行済株式数94,286,400株(自己株式を含む)ベースで、Yahoo!ファイナンス表示値3,732,799百万円と完全一致します。1株当たりデータは自己株式控除後89,630,666株ベースで、会社開示のBPS・EPSと整合します。2つの株式数ベースが混在しているため、PBRに14.38倍と15.12倍の2つの値が生じます(留意点4-b)。(c) 有利子負債をゼロとして扱っています。 借入金の計上はなく支払利息もゼロですが、リース資産(純額)136百万円に対応するリース債務が流動負債「その他」8,082百万円・固定負債「その他」121百万円に含まれている可能性があり、個別開示がないため未取得としました。EVへの影響は最大でも0.01%未満と見込まれます〔①〕。(d) EBITDAは概算ではなく開示実績値(営業利益105,259+減価償却費4,674)です。減価償却費は連結キャッシュ・フロー計算書の開示値を使用しています〔①〕。(e) 粗利益率はTTM(通期)ベースの実績値であり、単四半期値ではありません。(f) 従業員数は2025年6月期有価証券報告書の1,163名を使用しており、2026年6月期の従業員数は未取得です(有価証券報告書は2026年09月24日提出予定)〔①㊲〕。(g) 四半期単独値はすべて累計値の差分による自計算で、会社は第4四半期単独値を決算短信に掲載していません。
- 全セクション再監査の記録。 実施日:2026年08月10日。体制:4系統に分担(①材料・カタリスト、②リスク・政策・地政学、③競合動向、④財務数値・算術・競合基礎情報)で、各系統について一次ソース(決算短信PDF原文、東京エレクトロン決算短信PDF原文、KLA/ASML/Applied Materialsのプレスリリース、SEMIプレスリリース、レーザーテック製品ページ・会社概要PDF)との逐語照合を実施しました。判定の傾向:数値・算術は照合可能な範囲で全件一致(時価総額・PER・PBRの自計算値はYahoo!ファイナンス表示値と一致、TTM合計は通期開示値と完全一致、増減率は開示値と一致)。主な修正点:(i) 「EUVマスク検査シェア100%」を撤回(棄却)、(ii) 棚卸資産72.8%の「異常」表現を東京エレクトロン25.7%との倍率比較へ書き換え(要修正)、(iii) 1人当たり売上の「常識を覆す」表現をKLA比1.65倍へ具体化(要修正)、(iv) 顧客集中79.4%を「2025年6月期時点」と時点明記(要修正)、(v) 装置市場との逆行を「1年のラグ」という構造説明へ書き換え(要修正)、(vi) アナリストレーティング記事3本を2024年記事と判定し全削除、(vii) RONPYO記事の全数値を決算短信との不整合により不採用。株価基準日と監査日の乖離:本レポートの株価基準日は2026年08月10日で、全セクション再監査の実施日と同一です。したがって乖離はゼロであり、結論への影響もありません。ただし当該銘柄は直近18営業日で日次±10%前後の変動が5回発生しており〔⑱〕、本レポート公開後の株価と本文中の倍率系指標(PER 45.91倍・PBR 15.12倍・PSR 16.20倍)は速やかに乖離します。本調査の体制上の限界:本レポートの調査・反証検証・再監査は単一の調査主体が、論点ごとに独立した検索クエリと一次資料照合を分けて実行する方式で行いました。仕様書が推奨する複数の独立エージェントによる分担体制ではないため、系統間の独立性は構造的に担保されていません。この点を検証レベルの制約として明記します。
調査体制:メインリサーチ 5検索アングル・38ソース取得(うち法定開示PDF原文5本=レーザーテック2026年6月期通期/3Q/2Q/1Q決算短信、東京エレクトロン2027年3月期1Q決算短信)/補完調査 2観点(独占の持続性と会計への疑義、需要先の設備投資と競合の同時点比較)/target bug trends 反証検証 12論点(支持7・要修正4・棄却1)/全セクション再監査:4系統。引用記事総数40本。
作成日:2026年08月10日(2026年08月10日再監査反映)
本レポートはAIエージェントによるディープリサーチ(メインリサーチ:5検索アングル・38ソース/補完調査:2観点/target bug trends反証検証:12論点/全セクション再監査:4系統)の結果を統合したものです。調査・検証はいずれも単一の調査主体が論点ごとに独立した照合を分けて実行する方式で行っており、複数エージェントによる分担体制ではありません。作成日:2026年08月10日
免責事項(再掲):本レポートは公開情報の整理を目的とした情報提供であり、投資勧誘・投資助言ではありません。記載された数値・見通しは記載時点の公開情報に基づくものであり、その正確性・完全性を保証するものではなく、将来の株価・業績を保証するものではありません。競合比較の星評価は本調査で確認した事実に基づく定性評価であり、投資推奨ではありません。予測値・シェア推計はすべて出典元の見解です。投資判断はご自身の責任において行ってください。


